手先の不器用さと粗大運動の関係
上手くハサミが使えないなどの手先(指先)の不器用さは、「体を真っ直ぐに保つことができること」や「安定した姿勢を保つことができること」などの体の基本があってこそ育ってくるものです。
例えば、山道を走るバスの中で小さなメモ帳にきれいな字を書くことは至難の業ですよね。
ギターやピアノを弾くときも、体幹を安定させることを学ぶために、「まずは弾く体勢から」学ぶと思います。
このように手先の器用なことを行うためには、姿勢が安定しておくことが前提条件です。
逆に言うと、体幹などがしっかり働かず、姿勢が安定していなければ、手先の器用さは育ちにくいということになります。
さらに体幹を上手く使えないと、もう一つ問題がでてきます。
それは、歩く、階段を上るなどのダイナミックな動き(粗大運動)が上達しないということです。
そして、粗大運動が上手く行えないと、これもまた手先の不器用さにつながります。
このように体幹機能や粗大運動と手先の器用さは密接な関係があります。
手先の不器用さが気になったら、体幹機能や粗大運動の器用さについても見直してみるのが良いでしょう。
体幹機能の問題の見つけ方
体幹機能がしっかりとしていない場合、真っ直ぐ立つなどの活動が行いにくくなります。
また歩いているとすぐに転ぶ、片足立ちやケンケンができないなどの特徴もあります。
粗大運動の問題の見つけ方
ボールを投げる、蹴るなどの動作がタイミングよく行えないといったことや、姿勢よく座ることができない、ラジオ体操がぎこちなくなってしまうなどがあれば、粗大運動に問題があると言えます。
手先の器用さを練習する前に、体幹機能の向上を目指すこと
体幹が上手く使えないようであれば、手先を使う練習ばかりしていても意味がありません。
その前に、体幹機能の向上を目指すべきです。
なぜなら、子どもの発達は中心から末梢(先端の方向)に向かって広がっていくからです。
体幹のコントロールが良くなるなど、体の使いこなしが上達してくれば、徐々に手先の活動へつなげていくのがよいでしょう。
学習と同じで、まずは基礎、それができてから応用へとつなげていくのがよいですね。
人の活動でいえば、粗大運動や姿勢の安定が「基礎」で、器用さが「応用」ということになります。
具体的な取り組みとしては、「動作をゆっくり行うこと」を意識させます。
体幹の固定性などに問題がある子どもさんは、動作はゆっくり行うことが苦手な傾向があります。
そのため、どんな動作も素早く行ってしまいます。
それが繰り返されるので、いつまでたっても体幹の固定力が向上しません。
練習方法としては、ボールを投げる、蹴るなどの動作において、ゆっくりさせるようにします。
また階段の上り下りなども、できるだけゆっくり行うように声かけをしてあげましょう。
ちなみに私がオススメする運動方法は、「ラジオ体操をゆっくりと行う」ことです。
ラジオ体操は、体の色々な部分をまんべんなく使い、また様々な体の動きを取り入れている、とてもバンラスの良い運動なのです。
このような取り組みを続けていくことで、体幹のコントロール力は上達していくでしょう。
基礎を作ってから、器用さへつなげる活動を
基礎を活動の中で作っていき、一定の効果が出てくれば、手先の器用さなどの向上にもつなげていきましょう。
体幹が安定力が育ってきていれば、以前よりも手や指先の活動が行いやすくなっているはずです。
そのような基礎が育った状態で、手先を使う活動(ひもを結ぶなど)、遊び(レゴやラキューなど)を積極的に行っていきましょう。
繰り返し時間をかけて、手先を使う遊びを行うことで、徐々に器用さは向上していきますので、様子を見ながら進めてください。
もし、急ぐあまり、「もう一度やりなさい」や「どうしてできないの?」といった声掛けをしてしまうと、子どもは萎縮するばかりです。
それよりも「取り組んでいる気持ち」を認めてあげながら、ゆったりと関わってあげましょう。
目のコントロールに課題がある場合は、専門家に相談しましょう
なお、指先が不器用なお子さんの中には、「目が上手く使えていない」という原因が隠れている方が一定数おられます。
そういったお子さんの場合は、体幹もなかなか安定しない、なにもないところで良く転ぶ、といった様子が見られることが多々あります。
この場合は、練習を繰り返しているだけでは、器用さが改善することはありませんので、理学療法士や作業療法士など運動発達の専門家にかかるのがよいでしょう。
目のコントロールに苦手さがあることを評価する方法としては、「間違い探しの絵本が苦手がどうか」「消しゴムやおもちゃを探すのが苦手」などの特徴があります。
一度、日常の中で、目の使い方が苦手ではないかどうかチェックしてみてください。